「世界一夢の国に近いクラブ」JFL・ブリオベッカ浦安
ぶサッカー
みなさんはご存知だろうか?
夢の国ディズニーリゾートがある浦安にはサッカークラブが存在していることを。現在JFLを戦う「ブリオベッカ浦安」は千葉県浦安市を本拠地とするクラブチームだ。1989年に設立された浦安ジュニアサッカークラブを母体として成長し、2015年にブリューナク(ケルト神話に登場する槍)とベカ(古くから浦安で使われていた船)を組み合せて「ブリオベッカ浦安」が誕生した。
世界一夢の国に近いスタジアム
ブリオベッカのホームスタジアムは、舞浜駅から徒歩10分ほど歩いたところにある。道のりの途中にあるイクスピアリにはブリオベッカのユニフォームが飾られ、この街にサッカーがあることを知らせてくれる。海が近いこともあり、南国の雰囲気を感じさせてくれる道を進むとホームスタジアムの「浦安市陸上公園競技場」にたどり着く。
スタジアムに着いて真っ先に目に飛び込んでくるのが、グラウンドから見えるディズニーのアトラクションだ。そう、スタジアムの目と鼻の先にはディズニーシーがあるのだ。サッカーを観ながらディズニーの世界を感じることができる、何とも不思議な空間に来た感覚になってしまう。ただ、世界中探してもこれほどディズニーに近いスタジアムはここにしか存在しないのではないだろうか。そういう意味でもとても貴重な体験がここではできる。
スタジアムそのものはスタンドに1000人、芝生に1500人程度収容できる小さなものでスタジアムと呼ぶには物足りないかもしれない。ただ、それを忘れさせてくれる解放感がある。メインスタンドしかないので、風が通り心地よく、空もいつもより広く感じる。しかも、真っ白なスタンドに青いトラックが栄え、地中海の建造物ような色彩の美しさもあって個人的には好きなスタジアムである。
しかし、残念なことに現在はJFLの規格に合わずホームスタジアムとして使うことが出来ていない。この日も試合ではなく、ユースの練習が行われていた。今後、使用するとなると改修が必要で、すぐに解決できる問題ではない。ただ、この世界でも珍しいスタジアムをこれからもホームスタジアムとして残していってもらいたいのが正直な気持ちだ。
ジュニアサッカーに原点を持つクラブだからこそ
現在チームは近隣のスタジアムを使用して試合を開催している。そのうちのほとんどの試合を開催しているのが「柏の葉公園総合競技場」だ。この名前を聞いて懐かしく思う人もいるかもしれない。以前は、柏レイソルのホームゲームを開催していたスタジアムである。最寄りの柏の葉キャンパス駅からはバスか徒歩でも15分ほど歩けばいくことができるが、ホームタウンが浦安市と言うことを考えると遠くなってしまう。
それでも、スタジアムに入ると空席は目立つもののスタンドの前の方は8割ほど埋まっていた。そのなかでも、子どもたちの多さが目立った。ブリオベッカの下部組織の子どもたちだろうか。家族と共に、沢山の小学生サポーターが観戦に訪れていた。アップをする選手を見て「あっ、コーチがいる」と嬉しそうに手を振る子がいれば、選手に向かって「サインくれー」と気の抜けた声援を送る子もいる。まさに自由そのものである。
普段教わっているコーチが選手として出場していることはJFLならではの光景だ。ブリオベッカはこうしたジュニア世代の育成にも力を注いでいるクラブだ。大人が子どもたちにサッカーを教え、試合ではその大人を子どもたちが応援し支える様子はジュニアサッカーを原点にもつブリオベッカを象徴しているように思えた。
年齢を超えて作られる会場の雰囲気
試合が始まると子どもたちは一人のサポーターとなって声援を送る。子どもたちは応援団に合わせてチャント(応援歌)を歌い会場を盛り上げる。応援団そのものは10人にも満たない少数精鋭だが、子どもたちの声援から会場全体に広がり、全員で手拍子をして応援する。年齢は違えど、ブリオベッカを愛する気持ちは変わらないのだろう。そんな一体感が会場にはあった。
ブリオベッカのチャントは独特で面白い。さすが、夢の国に本拠地を置いていることもあって、キックオフと同時にアナ雪のテーマである「Let It Go」に合わせて、ブリオベッカの合唱。「ミッキーマウスマーチ」も登場し、たまにディズニー感を挟んでくる。いい意味で「次は何が出るのか」と期待してしまい試合に集中できない。そして、試合に勝利すると「お魚天国」で締めくくり、最後は海の街である浦安らしさも忘れない。そんな地元愛に溢れたところがまたこのサポーターたちの良さだと思った。
いつかみたい本当の姿
今はまだ、浦安から離れたこの場所でしか試合を開催することができない。ただ、それでも試合に駆けつける熱心なサポーター、大勢の子どもたちの応援を見ると、いつかホーム浦安で戦うブリオベッカの本当の姿を見てみたいと、自然に思ってしまう。そして何より、ブリオベッカで育ったこの子どもたちが、ブリオベッカの選手として活躍する姿をぜひ見たい。