「我が道を行く若き太陽たち」 J1・柏レイソル
柏レイソルは、J1に所属し千葉県柏市をホームタウンとする千葉を代表するチームだ。1994年にセレッソ大阪とともにJリーグに昇格。以降2度のJ2降格を経験するが、2011年にはJ1昇格1年目での優勝を達成するなど近年の実績は名門にも引けをとらない。
若い世代育成の秘密
柏駅から徒歩15分ほどの場所に柏レイソルのホームスタジアムである、「日立柏サッカー場」がある。日立柏総合グラウンド内にあって、スタジアムの隣にはトップチームやユース、ジュニアユースまでが練習を行うグラウンドがある。下部組織の選手にとってスタジアムを見ながら、しかもトップチームとグラウンドを並べて練習ができるなんて、相当なモチベーションになる環境だ。この試合では、6人もの選手が柏レイソルU-18出身で、キャプテンの大谷秀和もU-18で鍛えられた。まさに下部組織を軸にしたチーム作りができている証である。他にも酒井 宏樹(現・マルセイユ)工藤 壮人(現・バンクーバー・ホワイトキャップス)など海外挑戦する選手も多く、それは育成年代から、世界のプレーを肌に感じながら練習できる環境があったからかもしれない。若い力の育成にはそれなりの理由と環境があった。
小さくたっていいじゃないか
そう思わせてくれるのが、「日立柏サッカー場」だ。スタジアムそのものはあまり1,5109人収容と大きくない。しかも、バックスタンドは鉄板を組み合わせただけのような簡易的なものだが、それはそれで味があっていい。ピッチと観客席との距離も近く、声援やヤジなんでも聞こえてしまう。むしろ、観客と選手との距離を縮めてくれるので、派手で大きなスタジアムよりアットホームな雰囲気を感じさせてくれる。初めてスタジアムに来た人にとっては、あまりの鉄骨具合に拍子抜けするところがあるかもしれない。でも、試合が終わるころにはきっとこのスタジアムの魅力に気が付くはずだ。
独自の応援スタイルを貫く
サッカーに対し、熱く情熱的な部分を持ちながら、応援では独自のスタイルを築き上げる。Jリーグでは海外のクラブチームのチャント(応援歌)をもとに作ることが多い。しかし、柏に限ってはオリジナルのものがかなりある。それでいて、ダサい。どこからその曲を持ってきたのかというほど謎の曲から、昭和を感じさせる懐メロまであり、かっこよさを逆行している。ただ、あえてカッコよさを求めず日本のオリジナルを作り続けるその応援は、聞いていてどこか懐かしく、かっこよさも感じてしまうから不思議だ。
「柏は『千葉の渋谷』」と、千葉出身の人が言っていた。千葉県民でない人にとって、全くもっていらない情報だ。ただ、柏サポーターの活気は、渋谷の街に負けないくらい、熱くて情熱的だ。ゴール裏では味方GKがポジションにつくと、柵を乗り越え、通路に雪崩れ込んで声をかける。「頼むぜ、航輔!」「絶対負けんなよ!」と鼓舞する声は、頼もしさと恐ろしさを併せ持つ。一方、敵のGKが入ると、今度はチャンスとばかりに野次を飛ばす。GKだったら絶対に後ろは振り向きたくない。振り向いたらそこで試合終了のホイッスルが鳴る。
この日一番の声援を受けたのは、クリスティアーノのFKの場面だ。クリスティアーノは昨年柏レイソルで大活躍したが、今年はヴァンフォーレ甲府でプレーしていた。6月の終わりに再び柏レイソルに移籍が決まり、晴れて復帰の舞台となった。直前の復帰であったにも関わらず、そこはクリスティアーノである。要所で存在感を示し、すでにチームの核となっていた。彼のキックの精度はJリーグでもトップクラスで、これだけでも観る価値がある。
もうひとり気なる選手がいた。中川寛斗である。ひと際目立つその身長は155cmで、2トップを組んだディエゴ・オリベイラと並ぶと子供のようである。ただ、それよりも目立ったのが豊富な運動量だ。FWでありながら、至る所に顔を出しボールを受ける。守備でも前線からプレスをかけ、交わされても再び追い掛け回す。まるでしつこい、そのスタイルは漫画から飛び出してきた、風祭将のようだ。後半89分に途中交代するまで、彼はひたすらボールを追い掛け回した。
「若き太陽たち」
柏レイソルは非常に若いチームだ。この試合でも、先発メンバーのうち、実に7人が五輪世代であった。それでいて、クリスティーノという絶対的エースに頼らず、個々がチームのために献身的に戦うことのできるメンバーが揃っている。それは下部組織からの継続した育成方針があるからだ。育成年代からトップチームの姿を追い、さらにはそうした先輩たちが作り上げた道を後輩が引き継いぎ、今のレイソルを作り上げているのではないだろうか。
(2016.7.2 vs新潟)
柏レイソル公式HP
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